
先日、日本温泉協会の総会に参加してきた。
本年度の総会に於ける3つの提言の一つが、『無秩序な地熱発電に
断固反対する』であった。
政府・経産省・マスコミがこぞって地熱発電を推進しようとしている中で、
温泉権益(温泉旅館の生活の糧)確保に協会挙げて反対している事が
よくわかった。
反対の大きな理由は、以下の二つ。
(1).温泉枯渇の恐れ
(2).原発に類似した水蒸気爆発など発電事故等による顧客離れ懸念
石油ショック時に開発した地熱発電現場付近の実際の温泉枯渇や、実際の
事故などもあり、十分な議論が必要であるというもの。
また、日本の温浴(入浴)文化がある中で、温泉とは最高の余熱利用その
ものでありその点についての理解もなされていないとのことであった。
私の考えとしては、一面的には当然の正論であると思うが、一方で、顧客
一人あたりの使用エネルギーは、原油換算で一般家庭で約2ℓ/人・日である
のに対して、温泉旅館・温浴施設では(規模や条件などによってだいぶ違うが)
約10~40ℓ/人・回であり、やはり使用過多であると言わざるを得ない。
(もちろん、人々に対する癒しやヘルスケア的なプラスの側面が沢山沢山あり、
故に私は日本の温泉・温浴文化を愛している・・・。)
一方で、使用済温排水の排熱利用や余剰熱(ボイラー排熱や未使用温泉排水)
活用がほとんど行われていないのも事実である。きちんとした統計が無いので
あるが、これら排熱・余剰エネルギーは、100室以上の大型温泉旅館や大型の
日帰温浴施設では、恐らく1,000万kcal/日(重油で1,200ℓ/日)くらいあるの
ではなかろうか? また、自然環境の良い地域にあることが多く、太陽光・
太陽熱・風力・バイオマスなどの自然エネルギーも存在しているが、投資回収が
悪いために、個別の1軒が活用することはかなり難しいのが事実である。
この問題の背景にあるのは、温泉旅館や温泉・温浴施設業は、非常に裾野が広く
関連マーケット規模が大きい(日帰温浴施設だけでも約5,000億円の市場、また
温泉旅館業は、これもきちんとしたデータがないが宿泊部門と温浴部門だけで
1~2兆円ほどと推測されている。そこに出入りする関連業者まで含めると相当
なマーケットと言える)にも関わらず、国策としての産業構造組成に対する支援が
薄いことではないかと思う。従って、科学的・論理的な経営指針・設計指針などが
あまり存在しておらず、問題とその解決方法が顕在化されていないのではなかろうか?
観光立国と言い、アクティブシニアのヘルスケアと言い、インバウンドと言って
いる以上、業界を挙げての深い学習が必要であろうし、また国策としての大局的な
支援制度を充実させてもらいたいものだ。
震災によって、人々のライフスタイル(モノの価値判断)が変わり、当然に
ビジネスモデルも変えていかざるを得ないであろう。
国や地方公共団体は、裾野の広い(社会影響が大きい)温泉旅館業・温泉・温浴
施設業に対して、長期的・多面的・根本的な思考でエネルギー政策を考え、
支援していって欲しいものだ。

